東急7000系電車(初代)は非冷房だから急行に使う?
東急7000系電車(初代)とは?
東急には現在運用されている7000系とその前の初代7000系の2種類があります。
本記事では初代7000系について書きますが、特段の部分以外は(初代)という文字は入れないこととします。
私は日吉に10年も住んでいましたからこの7000系は数え切れないほど乗っています。
東横線の急行はもちろん日比谷線直通電車としても乗りました。
だから特段の思い入れがあります。以下のような車両です。
Wikipediaからの引用 : 1980年3月1日撮影
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この写真が撮影された1980年3月はまだ私が日吉に住んでいた時なので「もしかしたら」この写真の電車に私が乗っているかもしれません。
撮影場所は都立大学駅から自由が丘駅に向かって坂を登り切って、下り坂にかかる部分でこの坂を下りた谷底に自由が丘駅があるのです。
写真を一目見ただけで私には場所がわかります。
車体はステンレスで台車は「パイオニア型」と言ってブレーキディスクが車輪の外側に付いているという珍しい構造でした。
モータは直流複巻電動機ですが、起動時にはやや大きめの独特のモーター音がしていました。
うるさいと言えばうるさかったですね。
車体の横の縞々はコルゲートと言って、ステンレスを使った軽量化と高剛性を両立させるためのものです。
この7000系の車体は実はアメリカのバッド社という会社からライセンスを受けて生産されていたのです。
ですので車内車端部の上部には以下のような英文のプレートが貼ってありました。
Made in Japan by TOKYU CAR MANUFACTURING CO., LTD.
under license from THE BUDD COMPANY Philadelphia, Pa., U.S.A.
つまりアメリカのバッド社のライセンスのもとに日本の東急車両で作られた、という意味ですね。
私がこの車両に乗っていた時期(1970年代後半~1980年代半ば)はこの7000系、8000系、営団(現、東京メトロ)3000系の3種類でほとんどが占められていて、ごくごく一部に青ガエルこと5000系が走っていました。
そしてこの7000系は日比谷線直通用を除く東横線内だけの運用ではなぜか急行用にばかり使われていました。
もちろん7000系の各駅停車もありましたが、それは非常に珍しかったのです。
急行用だからこそ「古い車両」、「冷房無し」を採用?
私は当時最新の8000系(後に8500系も投入された)が急行にたまにしか使われず古い7000系が急行の主力だったのが理解できませんでした。
しかも7000系は冷房が全くないんです。
ご存知の方は頷いて共感して下さると思いますが、朝の渋谷方面の東横線の混雑はすさまじく、体が斜めになっても身動き取れないほどでした。
特に急行の混雑はひどかったです。自由が丘では普通列車の接続と大井町線への乗り換えでかなりの人が降りるのですが、でも10人降りたら30人乗ってくるという感じでした。
中目黒では日比谷線に乗り換えて都心に向かう人が多いので中目黒~渋谷間は少し空いてホッとできる時間でもあったのです。
でもとにかく冷房無しは厳しかったです。当時最新の8000系でもすべて冷房車ではありませんでしたが、ともかく8000系は冷房がありましたからね。
関連記事: 東急8000系電車には「当たりとハズレ」があった
相当あとに何かの記事で読んだのは「7000系はデビュー当初は冷房搭載を考えておらず、軽量化のために屋根に冷房搭載出来るほど強度を持たせていなかった。」とか。
その後他社へ譲渡されて屋根を強化して冷房化した車両もあったようですし、池上線でも使われたようですね。
(池上線などで使われた車両は7700系という名称で冷房化やインバータ化がされています。)
さて急行に多く使われて理由ですがどこを探しても明確な回答がありません。
でも沿線に10年住んで、さらにその後も頻繁に東横線を利用していた私として以下のような理由ではと考えています。
● 加減速、高速域での加速の伸びなどあらゆる性能で8000系の方がはるかに良い。
しかし各駅停車に対して停車駅間距離が長くなる急行であれば加減速性能はそれほど重視されないから(ではないか?)。
でも沿線に長く住み、今でも東急のファンである私からすると心苦しいのですが東横線の急行は昔から特急が走るようになった現在に至るまで停車駅の多さは悪評高きものがあり、確かに各駅停車に比べれば停車駅間距離は長くなりますが、首都圏の通勤路線ですから急行でも停車駅間距離は2~4km弱くらいしかないのです。
まあ過密ダイヤでもありますので各駅停車用に加減速性能の良い8000系を充当するというのは正しい選択でしょうね。
● 各駅停車に比べて停車駅数が少なく、乗客の乗車時間も短いので非冷房の7000系でも構わないという考え。
確かにそうと言えばそうなのですが、先に述べたように停車駅間距離が非常に短く、それでいて乗客は急行に集中するので理由にはなっていませんね。
間違っているかもしれませんが、上記以外の理由がみつかりません。
東急7000系は実は2種類あった
もちろん地下鉄日比谷線に乗り入れるために地下鉄用のATCを搭載している車両とそうでない車両があるわけですが、装備面だけでなくてモーター出力の違いで2種類ありました。
モーターは1両に4個づつついていますが、60kw出力のモーターのものが東洋電機製造で、70kwモーターのものが日立製だったようです。
モーターを中心とした電装品の違いだけで車体や車内設備の差はなかったと思います。
でも私が知る限りでは運転席の計器に違いがありました。
東洋電機製のモーター出力の小さい車両は特に速度計の目盛りの大きさが違うんです。
日立製は目盛りの大きさが大きくて視認性が良いのです。(でも両車ともにフルスケールは120km/h)
私が利用していた時期は日立製車両の方が圧倒的に本数が多かったのではと思います。
乗っていれば両車の差なんてわからない気がしますが、実は毎日乗っているとはっきりとわかるのです。
東洋電機製のモーター出力の小さい車両はビックリするくらい加速が悪かったんです。
ともに起動加速度はスペック上は4.0km/h/sとなっていて今の時代でも最高水準の加速度ですが、でも定格速度が非常に低いのでこの高加速も起動してすぐに頭打ちになります。
東洋電機製は中速域からの加速が全然ダメでした。
運転席の真後ろにかぶりついて見ていると運転手がフルノッチ(最大出力)を投入しても速度の上りがビックリするくらい鈍いのです。
極論いうと「電車版キハ40。ただしエンジン換装前の」となります。
(マニアックすぎてわからないかも?)
だから急行運用でも東横線のように停車駅間距離が非常に短い運用では少しでも遅れが出ている時は次の駅の直前まで加速を続けてすぐにブレーキをかけるという運転も何度も見ました。
7000系は非常に軽い車両ですが、モーター出力の10kwの差がこれほど大きく効いてくるとは驚きでしたね。
さて7000系はその後地方私鉄に譲渡されたりしましたが、一部を除いてかなり廃車になっているようです。
7000系は日本の鉄道史に残る名車であり、その後の多くの車両に与えた影響は大変に大きなものがあります。
忘れたくない車両の一つです。
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