MZ-80K2E 初めて買ったパソコン
シャープのパソコンの名機・MZ-80K2E
初めて買ったパソコンは1981年(昭和56年)発売のシャープのMZ-80K2Eでした。
購入したのは1982年4月です。
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この時期、世はパソコンブームで各社から色んな機種が発売されていてコンピュータメーカ以外も家電メーカ、ゲームメーカやAV機器メーカなどもこぞって発売していました。
TV-CMもガンガンやっていました。
でもこの当時はパソコンというよりも【マイコン】という言い方の方が一般的だったと思います。
個人の趣味に使うにせよ最低限のプログラムを組んで色んなことをやらせる、となると価格が凄く高かったですね。
私が買った本機の前身のMZ-80Kなども198000円もしました。またプリンターも高いし、プリンターケーブルだけでメーカにより5000~20000円以上もしていたと思います。
MZ-80シリーズのライバルともいえるNECのPC-8001はディスプレイ、ケーブルなど全て別々に購入しなくてはいけなかったのでかなりの価格になりました。
でもMZ-80シリーズはディスプレイ、データ保存/読込み用のカセットデッキがオールインワンでしたのでかなりのお買い得でしたね。
そしてMZ-80シリーズ10万台発売記念モデルとしてMZ-80K2Eが発売されたのです。
価格は148000円と機能は同じなのにMZ-80Kよりも5万円も安いというモデルでした。
MZ-80K2Eは頭が空っぽのコンピュータ
シャープのこのシリーズは「クリーンコンピュータ」という名称で、他社のパソコンがBASIC言語をROMで持っていてパワーオンですぐにBASICが使えましたが、クリーンコンピュータは毎回カセットテープから本体にBASICをローディングしなくてはいけない、というちょっと(かなり)面倒なものでした。
シャープはこのBASICを「クリーンBASIC」と呼んでいましたね。
カセットテープからのデータ転送なので結構時間がかかりますし、本体側も今のようにフラッシュメモリーではなく全てD-RAMなので電源切ると全部消えてしまいます。
でもある意味これがMZシリーズの強みなんです。
BASIC以外の言語も使えるんですね。
私は別売りの簡易型のFORTRANのFORMという言語を買いました。
私が初めてコンピュータに触れたのが学校の授業でやったFORTRANだったからです。
このFORMは確かインタープリターではなくてコンパイラだったと記憶しています。(違うかな?)
でも本体付属のクリーンBASICのほうがコマンドも多く使い勝手は全然良かったのでFORMはすぐに使わなくなりました。
買わなかったけれどCOBOLも売っていたと思います。
私が撮影した本機の写真は見当たらないですが、1枚だけPCの「整理前フォルダ」から発見した当時のパソコン雑誌の裏表紙を写したと思われるものが出て来ましたので以下に載せておきます。
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使い倒したMZ-80K2E
これはかなり使いましたね。
BASICは私にとって初めてとは言え、FORTRANではかなり色んなプログラムを組んだ経験がありますし、BASICはFORTRANを基本にして作られていますので文法が非常に似ています。
だからすぐにプログラムに取組めました。
私は元々情報処理が専門ではなくて電子回路のほうが専門なのですが、幼少の頃から色々な電子工作もやっていましたので回路の計算プログラムを作ったり、簡単な音楽も鳴らせるのでタイマーと組合わせて目覚まし時計も作りました。
また当時は色々なパソコン/マイコン雑誌にプログラムリストが毎回相当量載っていましたので、面白そうなプログラムを本を見ながら週末には徹夜で入力したこともありました。
当時、雑誌に出ていたプログラムはある程度複雑なことをやらせるものはBASICではなくて、アセンブラ言語やマシン語で書かれていました。
面白かったのがキーボードで文字を打つとその通りに読み上げるという当時としては非常に画期的なプログラムを発見し、マシン語のダンプリストを打ち込んで、タイマーと連動させて音声の目覚ましも作りました。機械的な味気ない発音でしたけどね。
マシン語で入力というのは僅かな仕事をやらせるにしても物凄い量のプログラムになりますが、入力後に走らせて間違いの既述があると完全にフリーズしてしまったりして結局電源入れなおし→ダンプリストをゼロから入力やり直しという地獄を何度も経験しました。
当時は知り合いにも「マシン語以外でプログラムを書いたことが無い」なんていう猛者もいましたね。
ここまで来ると猛者どころか変態では?と思いますが。
プリンターなどの外部機器は値段が高くて手を出せませんでしたが、本体だけでも相当楽しめました。
クリーンコンピュータの思想はともかく、オールインワンにしたシャープは偉いと思います。
リセット回路は自分で作れ!というMZ-80K2E
当時のパソコンはどの機種も当たり前のように裏面などに「リセットボタン」が付いていました。
これを押すと全てのデータが消えて再起動となります。
自作プログラムを使うのが前提だった時代ですからプログラムの不具合で暴走した時にこのボタンを押すわけです。
でも、MZ-80K2E(多分その前のMZ80シリーズもだと思うが?)はリセットボタンがありません。
何と画期的な!ということではなくて、マザーボードにリセットボタンを追加するパターンが作られていて、シルク印刷で部品の位置も指定されています。
そして取説を見ると「マザーボードのリセットボタン追加回路の部分に指定された部品を差込んで半田付けして下さい」と書かれています!
こんなぶっ飛んだコンピュータ、いや趣味の家電は前代未聞だと思います。
部品も自分で買って来い!です。
私は前述したように電子工作はお手の物ですが、面倒くさいので結局手放すまでリセットボタンはつけませんでした。
MZ-80K2EはHDDが内蔵されているわけでもないし、RAMは全てD-RAMですのでフリーズしたら即座に電源スイッチを切って再投入すればよいからです。
でも驚きですね。自分でプリント基板の空いているパターンに買ってきた部品を半田付けしろ!なんて。
なお以下のサイト様に詳細な内部も含めた写真がありますのでご覧ください。
(リンク切れはご容赦下さい)
ある意味パソコンが一番面白かった時代
この頃は基本は全て自分でプログラムを組むのが当たり前でした。
もちろん市販のソフトもありましたが、値段も高いしビジネス中心だった気がするので選択肢も狭かったです。
しかも一番の問題は今のWindowsのように統一されたOSの元でプログラムを動かすという考えではなかったのでメーカが変わったら全て異なるということでした。
これは明らかに業務機の流れを引きずっています。
メインフレームや当時流行りつつあったミニコンはOSも各社独自だし、同じ会社でも機種が異なればOSも別のものが必要というのが当たり前でしたからね。
この考えを改めて一般家庭にも普及させよう、と考えられたのが後のMSXパソコンだと思います。
でもMSXは完全に家庭向けの用途であり、マニアが高度なことをやらせるにはかなり役不足でした。
だからWindowsが世に出るまでNECのPC-9800シリーズが標準となっていたのだと思います。
MSXよりははるかに高い性能を持っていましたからね。
今の時代のPCと比べると何と原始的で貧弱なマシンだったんだと思います。
いや、今のPCやスマホがあまりにも性能が凄すぎて未来的なマシンであると言った方が正しいかもしれません。
でも1980年代のパソコン/マイコンはマニアにとっては一番面白かった時期であると私は今でも思っています。
しかし今の段階で、「1980年代のパソコンと今のWindowsのマシンのどっちを選ぶか?」と言われたら私は迷わず後者を選びますけどね。
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