ロッキード トライスターと着陸復行
実に快適な客室のロッキード トライスター
今は日本の空から引退してしまいましたが、「ロッキード トライスター」というジェット旅客機がありました。
正式名称はロッキード L-1011 トライスターと言います。
メーカはアメリカ合衆国のロッキード社(現、ロッキードマーティン)です。
ロッキード社は戦闘機などではかなりの先駆のメーカでしたが、旅客機は作っておらずボーイングの独占状態でした。
起死回生をかけて作られた飛行機とも言われています。
(でもロッキード事件の一端もありましたね)
私の記憶が間違えでなければトライスターはロッキード社で最初で最後の旅客機だったと思います。
機体は左右主翼に1機づつ、尾翼部分に1機の計3機のジェットエンジンをつけた構造で、似たようなエンジン配置にはマクダネルダグラス(当時の社名)のDC10などがありますが、トライスターはより大きな印象がありました。
私が乗ったのは正確な記憶ではありませんが、1985年~1989年頃だと思います。
羽田から函館空港までの搭乗でしたが、機内に入って驚いたのは「凄く広くて天井が高い!」と感じたのです。
通路2本挟んで横が8か9列だったと思いますが、より大型のB747(ジャンボ)より広く感じました。
その理由ですが、実は機体中央の座席上には荷物棚がないんです。
通路側の荷物棚を使えということのようです。
だから機体中央分は凄く天井が高くなっていて圧迫感がないので凄く広く感じたんです。
なんというか映画館みたいな雰囲気でした。
更に強く感じたのが自分が座った場所のせいもあるとは思いますが、エンジン音が静かだったということです。
トライスターは1960年代後半の機材なのでかなり古いものとなりますが、ロッキード社が軍用機で培ったノウハウを満載したといわれていますのでそういう技術も静音化に役立っていたのかもしれません。
とにかく実に快適な機内でした。
でも機体中央部分に荷物棚がないというのは乗客はもちろん、客室乗務員からも良い印象は無かったそうです。
初めて経験した着陸復行
着陸復行というのをご存知ですか?
英語ではゴーアラウンド(Go-around) といい、着陸をやり直すことです。
滑走路の状況、着陸直前の天候の急変、機材の不調などによって稀に着陸をやり直すことがあります。
パイロットは訓練も含めて相当経験しているはずですが、一般の人はしょっちゅう飛行機に乗っていても滅多に経験することはないと思います。
でも私は「初めて乗ったトライスターで初めての着陸復行を経験」したのです。
アナウンスで最終着陸態勢に入ったことが伝えられ、函館の町が手に取るように見えてきた時に、いきなりエンジンが猛烈な唸りを上げて驚くほどの急角度で上昇を始めたんです。
離陸時でもこれほどの急角度は経験ないほどでした。
急角度のせいもありますが物凄い強烈な加速で体はシートに押し付けられて身動きできなくなります。
隣の列にいた若い女性グループは、「キャ~恐い」と叫んでいました。
年配の男性も「うわぁ」と叫ぶほどでした。
そして時間にして多分1分も経っていないと思いますが、機長からのアナウンスで「ただいま函館空港の滑走路に犬がいるとの連絡が入りましたので犬を除去するまでの間上空で旋回待機します。」と。
なんで滑走路に犬が?と思いましたが、フェンスの隙間から入ったのかもしれませんし、ともかく乗客として座っているしか何も出来ません。
多分上空で20分以上旋回していたと思います。「犬の除去と安全確認が終わりましたので着陸します」とアナウンスがあり無事に函館空港に着陸しました。
それにしても着陸復行の時の上昇って物凄い角度と加速なんですね。
言ってみれば緊急事態ですから当然なのでしょうけど。
私は殆どが国内線ばかりですが飛行機にはよく乗るほうだと思います。
でももしかしたらもう2度と着陸復行は体験できないかもしれません。
初めての機材で初めての貴重な体験をした旅行でした。
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