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昔のオーディオアンプは不思議な機能満載!

今のオーディオはとても貧弱・・・

時代や年齢を問わず音楽は誰にでも愛されてきました。

その音楽を聴く手段がアナログレコードから、カセットテープ、CD、MD、メモリーオーディオ(スマホ含む)と変化してきましたが、ノイズや歪みも減りとても安価なシステムでも高音質が楽しめる世の中になりましたね。

でもオーディオ全盛時代の、特にアンプは当時をご存知ない方は信じられないほどの絢爛豪華&多機能でまさに「メカ」だったのです。

(オーディオ全盛時代とは大雑把に言って1960年代後半~1980年代くらいだと思います。)

 

今のオーディオは物にもよりますが、操作系統は電源スイッチの他は、「音量」「音質(高音と低音)調整」「入力切替(せいぜい3~5つ)」くらいしかありませんね。

もちろんオーディオメーカは昔からの機能を踏襲して、今でも多機能のアンプを発売していますが、でも決して売れ筋ではなく男心をくすぐる「メカ&存在感」では非常に薄い商品ばかりとなってしまっていると思います。

↓最近のアンプはどこもこんな感じですね。

昔のオーディオアンプの種類は?

オーディオ全盛時代には一言でアンプと言っても多くの種類がありました。

プリメインアンプ
レコードプレーヤやテープデッキ、スピーカーなどオーディオ関連機器をすべて繋いで、これ1台で音楽を楽しめるアンプ。
現在のオーディオアンプがこれにあたるが、今は高級アンプ以外は「プリメインアンプ」を名乗ることはほとんどない。
なお昔は「インテグレーテッドアンプ」とも言った。

「インテグレーテッド」とはintegratedのことで、「統合された」、「総合的」という意味で、つまり「全部入り」ということ。
(ただし「全部入り」とは言ってもFM/AMチューナーは含まれていない。後述します。)

↓プリメインアンプの一例(サンスイ製)
(クリックで拡大します)

画像引用元:WEB market 様
https://www.webmarket.co.jp/

プリアンプ
これは上記「プリメインアンプ」から「メインアンプ」を取り除いたもの。
別名コントロールアンプとも言う。多くの入力デバイスを切り替えたり、音質を調整する機能が付いているから。

メインアンプ(パワーアンプ)
メインアンプとは別名「パワーアンプ」ともいい、スピーカーを鳴らすだけのパワーを出せるアンプのこと。

総合アンプ
プリメインアンプにFM/AMチューナーを組み込んだもの。
オーディオアンプの中で最も多機能。もちろんメインアンプも内蔵なのでいきなりスピーカを繋げることが出来る。

「総合」というと英語でintegratedになるが、私が知る限りでは総合アンプのことを「Integrated Amplifier」と書いてあるのを見た記憶がない。

記憶の範囲ではどのメーカーも「Stereo Receiver」または「FM/AM Stereo Amplifier」だったと思う。
ぐちゃぐちゃ書くと長くなりすぎるからかもしれない。

↓総合アンプの代表的なデザイン
個人的には通常のプリメインアンプよりもメカメカしい総合アンプが好き。
(クリックで拡大します)

画像引用元:オーディオの足跡 様
http://audio-heritage.jp/

フォノイコライザー
これはレコードプレーヤからの信号を増幅するための専用アンプ。
本来このアンプは「プリメインアンプ」、「プリアンプ」に内蔵されているが、より高音質を求めるマニアのためにフォノイコライザーが独立して販売されていた。
(現在も極めて少数ながら生産販売されている。)

テープデッキやCDから出力される信号は数百mV~1Vrmsと振幅の大きな信号だが、レコードプレーヤからの信号は数mVrms(或いは以下)と非常に小さいので同じアンプで兼ねるのが難しい。

またテープデッキやCDでは低音~高音まで音がフラット、つまり音の高さで凸凹が無いアンプの特性になっているが、レコードプレーヤはRIAA規格(アメリカレコード協会の規格)と言って高音を強調して記録しているので(レコードの溝を有効に使って高音質を得るため)、フォノイコライザーでは高音を落として結果的にフラットな周波数特性になるようにしている。

(正確に言うとテープデッキも記録時にはS/Nや歪みを改善するためにフラットではなく高域を強調して録音していますが、テープデッキそのものの出力端子ではフラットの周波数特性で出力されます。)

つまりかなり特殊な特性のアンプと言える。
レコード再生時はこのフォノイコライザーの性能が音質を大きく左右するので、独立した高級品が生まれて来たということに繋がる。




通常プリアンプ(プリメイン含む)のフォノイコライザー部は2石トランジスタ直結アンプまたはOP-Ampを利用したもので、高級機でもせいぜい1FET +2バイポーラの3段直結くらいの構成なのですが、フォノイコライザー専用アンプはオールディスクリートの差動増幅2段+SEPP、オール定電流回路付とかパワーアンプも真っ青の回路構成もありました。

もちろんOP-Ampを利用したものもありましたが、OP-Ampと言っても安物ではなく、ローノイズ低歪みの高級オーディオ用、しかも左右チャンネルのクロストークを避けるために2個入りを使わずにシングルのOP-Ampを2つ使う、電源も徹底したローノイズ対策を施すなど信じられない贅沢設計品が普通にあったのです。


以上のように一般家庭で使うステレオでさえ多くの種類のアンプがありました。

でも拘らない人はまず「プリメインアンプ」か「総合アンプ」を1台買えば間に合ってしまいますし、1960年代くらいまでのステレオは当時のテレビのように【家具調】でしたので、「ステレオ下さい」の一言で全部ついていたのです。

但しテープデッキだけは別に買うのが普通であり、当時はわざわざ録音しようと思う人はマニアしかいなかったんでしょうね。

↓家具調ステレオの一例
(このステレオの一つ前の世代が「電蓄」と言われたもの)

画像引用元:ザイ-リヨン様
http://zai-liyon.com/

↓家具調の次の世代が「セパレートステレオ」となる。
(アンプ部(プレーヤ含む)とスピーカが分離して設置出来る形式)

画像引用元: Wikipedia

オーディオ全盛時は家電メーカも多く参入していた

現在高級アンプを作っている会社は昔からのオーディオメーカ、特に殆どが中小規模の会社ばかりとなってしまいましたが、全盛時代はオーディオメーカのみならず、大手家電会社も多く参入していたのです。

参入していた大手家電会社名と使っていたブランドの一部をご紹介しましょう。

日立製作所:Lo-D(ローディー)
Low distortionの略。低歪み(高音質)を表す。

東芝:Aurex(オーレックス)
Audio(音響)とrex(ラテン語のキング=王)を表す。

松下(現:Panasonic):Technics(テクニクス)
2014年度からこのブランドは復活した。
同社のTechnicsブランドと業務用PAシステムのブランドRAMSA(ラムサ)は一時的なブームのみならずプロの業界でも長く君臨し現役である。

三洋電機 :OTTO(オットー)

三菱電機:DIATONE(ダイアトーン)
ブランドを使い始めたのは1946年。NHKと共同開発したモニタースピーカなど特にスピーカー関連は世界第一級の評価を得ている。
従ってオーディオブームに乗って参入したものではない。

 

他にも「日本電気(NEC)」「シャープ」などの大企業も参入していました。



昔のオーディオアンプは不思議な機能も満載!

本来オーディオアンプは本記事冒頭に書いた数種の操作が出来るだけで良いはずですが、昔のオーディオアンプは「摩訶不思議」、「マニアでもこんなもの使うの?」という機能が満載で、どこのメーカも横並びどころか「次の新製品は〇〇機能も付けよう!」みたいに増えて行ったのが事実です。

しかし当時当たり前にあって「これはあった方が良いね」という機能が昨今無いのが普通になってしまったものもあります。

現在でもオーディオ全盛期並みの機能をそろえているアンプもありますが、ごく少数派になってしまいました。

LOUDNESS(ラウドネス)
このスイッチをオンにすると高音と低音が適度に強調されて聞きやすくなります。
人間の耳は音量が小さくなると、高音/低音が聞き取りにくくなるという特性があるので、それをアンプで補正するものです。
ラジカセ全盛時もこの機能がついている機種が多かったので、小さなスピーカーでも効果は大きかったようです。

今でもトーンコントロールを省略して、このスイッチのみを搭載しているアンプもあります。

また近年の比較的簡素な機能のオーディオアンプに「Bass Boost」というスイッチを装備したものがありますが、これは低音のみを強調するためのものであり。Loudnessのように同時に高音も強調する機能はありません。

TAPE SELECTOR(テープセレクター)
入力切換えスイッチ(SELECTOR/INPUT SELECTOR/FUNCTION)の他にテープデッキの切換えスイッチは別にあるのが普通でした。
まず当時のアンプの入力切換えスイッチの一例を以下に示します。

(クリックで拡大します)


PHONO:前述したレコードプレーヤを使う時

AUX1/2:Auxiliary 、つまり補助入力端子。他のプリアンプやマイクアンプ出力、ラジカセなどを繋ぐ。今だったらCDを繋ぐ端子。

TUNER:FM/AMチューナーを繋ぐ。信号レベル的にはAUXとほぼ同じだが、使い勝手を良くするために別にしてあるのが普通。

MIC : マイクを繋ぐとき。実際はMIC入力のある物の方が少なかった。

TAPE:この位置にすると以下のTAPE SELECTORで詳細な操作が出来る。


デッキを2台所有してダビングする人も多かったので「TAPE A」と「TAPE B」の2台を繋げる機種も当たり前でした。
(一部の高級機ではTAPE Cの3代目も繋げることが出来ました。)

このスイッチには以下のようなポジションがあり、OFFポジションの無いものもありました。
入力切換えをTAPE以外のポジションにしておけばTAPE SELECTORにあえてOFFポジションを設ける必要が無いからです。

(クリックで拡大します)

上記の例で、[ A > B ]はAデッキからBデッキにダビング、[ B > A ]はBデッキからAデッキにダビングという意味で、配線を繋ぎ変えなくてもアンプのスイッチ操作でダビングが簡単に出来たのです。

また一部の機種はAデッキとBデッキに同時に録音出来るポジションもありました。

MODE(モード)
モードと言っても色々なものが考えられますが、プリメインアンプ/プリアンプに搭載されていたMODEスイッチはステレオ信号をどう扱うかを切り替えるものです。
スイッチ的には以下でした。

(クリックで拡大します)


NORMAL:ノーマル、つまり通常はこの位置にする。

L(R): L(左)またはR(右)チャンネルに入力された信号のみを扱う時。例えばLにすると、LとRの両方にレコードプレーヤなどから信号が入力されていても、Lチャンネルのみの信号を扱いRチャンネルの信号は無視される。

L+R:左右チャンネルを合成してモノラル信号にして出力する。左右のスピーカから同じ音が出るが左右が合成となるのでステレオの臨場感は無くなってしまう。

REVERSE:リバース、ステレオのまま左右の信号を受け付けて出力するが、アンプ内で左右の信号が逆転して増幅される。L入力に入った信号はR出力から出て来る。ステレオではあるが左右逆転なので実際の臨場感とは全く異なったものとなる。


なんか至れり尽くせりの便利な機能のように思えます。
アンプの裏側に回って配線を変える必要が無いからです。

でもこんな機能使う場面があるのかどうか疑問でなりませんでした。
多くの本や友人の話を聞いても「このスイッチの存在価値自体が分からない」と言います。

まあ使う方もいたとは思いますが、特にREVERSEなんて「配線を間違えてLRを逆に繋いでしまったが、裏側の配線を直すのが面倒」という時くらいしか使わない気がします。

MODEスイッチを使う人いたとしても1000人に1人くらいなのでは?なんて今でも思ってしまいます。

その証拠というわけではありませんが、今のアンプで付いているものを見聞きしたことは一度もありません。

スピーカー切換えスイッチの不思議
中級機以上のプリメインアンプ/メインアンプであればスピーカーも2系統、または3系統繋ぐことが出来ました。

これも2組以上のスピーカーをアンプに繋いだまま音楽によって異なるスピーカーで楽しむというような使い方も出来ますのでマニアには受け入れられたと思います。

でも私から見ると不思議、と思う部分もありました。


・ヘッドフォン端子にヘッドフォンのプラグを挿入するとスピーカーは自動的に切断される機種と、プラグを差し込んでもスピーカー切換えスイッチをOFF位置にしないとスピーカーから音が出てしまうという2タイプがあった。

これはメーカによって考え方の違いなのだが、ある電気店のオーディオ売り場でヘッドフォンを試そうとした客がヘッドフォンで聞きながらもスピーカーからは大音量で音が出ていて店員が慌てて駆け寄ったという場面を見たことがあった。
ヘッドフォンをしているとスピーカーからの音なんて聞こえないし、ヘッドフォンにすれば音量を上げることが多いからなおさら。

・A+Bは安全?
繋げるスピーカーがAとBの2系統(または3系統)ある時、アンプによって「A+B」のポジションがあった。
これって危なくないのか?といつも思っていた。

理由はオーディオ全盛期はスピーカーシステムのインピーダンスは8Ωがほぼ標準で一部に4Ω品があった。
4Ωのスピーカーシステムを2つ並列にすれば2Ωとなりアンプの負担は一気に4倍となってしまう。

もちろん強力な電源を持った高級機で低インピーダンスのスピーカーでも余裕で駆動というものならば良いが、市販のアンプの殆どはコスト優先設計なので2Ω負荷でガンガン鳴らされたらファイナルトランジスタのPCmaxやTjmaxがもたないので保護回路が働くかまたは壊れてしまう。

また市販アンプの99%は肝心要の電源も連続ピーク電流を保証するような贅沢設計はしないので、ファイナルが吹っ飛ぶ前に所定のパワーを出せず単なるパワーダウン、そして保護回路作動で済んでしまったのかもしれない。


上記に加えて数十~100W超の出力を持つパワーアンプの出力系統に貧弱なロータリースイッチを直列に入れて、さらに保護リレーを入れるという事自体電流容量的によろしくなく、かつパワーアンプのファイナルは複数トランジスタのSEPPエミッターフォロワー、そしてたっぷりのNFBをかけているので超低インピーダンスですからなおさらスイッチが色々と入るのは音質的にも故障を考えても良い事ではありませんね。

TURN OVER(ターンオーバー)

簡単かつ大雑把に言うとトーンコントロールで調整する周波数特性を変化させるスイッチです。

一般にトーンコントロールは「TREBLE(高音)」と「BASS(低音)」の2つのつまみで音質を調整しますが、殆どのアンプはこの調整範囲の周波数が公表されていない、もしくはアンプのパネル面には表示されていません。

これを明確にし周波数特性をより細かく変えたい場合に使うのです。

なおトーンコントロールは上記2種類の音の調整の他に「MID RANGE」(またはMID)という調整つまみを持ったアンプもありました。

その名の通り「中音」の周波数特性を変化させるのです。
また更に細かく「MID High」と「MID Low」に分けて計4種類の周波数に対応したアンプもありました。

ここまで来るとグラフィックイコライザーに近くなってきますが、当時もグラフィックイコライザーはあったのですが、通常のアンプに搭載されることは殆どなくて、専用機をプリアンプとメインアンプの中間に入れて使うなどしていました。

トーンコントロールが細かく分かれている、ターンオーバー周波数を変えられるアンプはサンスイが多かったです。
他社製品は高級機であっても少なかったと思います。




TONE DEFEAT(トーンディフイート)
前述したようにトーンコントロールの周波数ごとの調整をより多く分割し、ターンオーバー周波数を変えることが出来ればスピーカーや部屋の状況、音楽の種類などに応じてより聞きやすい音にすることが出来ます。

しかし調整機能が多いということはそれだけ多くの回路部品やスイッチ、ボリュームが信号経路に直列に入るので当然音質の劣化が生じます。

特に楽器の数が少ない、単調なメロディーなどの曲だと大型スピーカーでなくても躊躇に音質劣化が分かるはずです。
(特にヘッドフォンだと余計です)

このような場合、もしくは「普段からトーンコントロールはすべてFLAT位置で使っているがより高音質で聞きたい」という場合はこのTONE DEFEATスイッチを操作すればトーンコントロール回路はすべてジャンプされてより高音質で音楽を楽しめます。

この場合トーンコントロールの各つまみの位置は無関係となります。

メーカーによっては「TONE CANCELLER」(トーンキャンセラー)とも言っていましたが機能的には全く同じです。

 

じっくり聞く場合このスイッチの効果は絶大でトーンコントロールをジャンプした途端に目の前のカーテンが開いたくらいの感覚の音になります。

特にトーンコントロールの調整が細かく出来るなど凝った設計のアンプほど効果が大きいです。
そういうアンプではトーンコントロール回路はCRだけのパッシブではなくて、エミッターフォロワーやOP-Ampのボルテージフォロワーを組合せていることが多いのでTHDやS/Nに問題なくても位相特性の悪化、1977年頃から言われ始めたTIM歪の悪化による音質劣化が無視出来なくなります。

エミッターフォロワーのように100%帰還の回路ではカスコードブートストラップやSEPP、大電流を流すなどの方策を取らないとどうしても過渡応答特性が悪くなります。

もちろん通常設計でもそこそこの性能が出ますが、トランペットのように切れ良くどこまでも伸びていく高音などを聞くと大きな差が出ます。

(私の経験からはTHDが多少悪くてもTIM歪の少ないアンプの方が圧倒的に音が良いと思います。これを突き詰めたのがサンスイのダイヤモンド差動回路でしたね。SR=200V/usは本当にびっくりしました!)

 

しかしオーディオ全盛期でもこのスイッチが付いている機種は半分も無かったと思います。

知り合いでアンプの自作もする人が(私も散々しましたが)、このスイッチのない某社のプリメインアンプを持っていて、試しにトーンコントロールを外したら凄くクリアな抜けの良い音になったと喜んでいました。

結局彼はトーンコントロール回路を元に戻しませんでした。

MUTING(ミューティング)
このスイッチを操作するとボリュームつまみを操作しなくてもいきなり音が1/10の音量になります。
つまり-20dBの減衰です。

今でいうテレビのリモコンの【消音ボタン】とほぼ同等の機能です。

ボリュームつまみの位置を変えずに瞬時に音を小さく出来るので比較的重宝された機能でした。
機種によっては-40dB(1/100の音量)も選択できるものもありました。

Subsonic(サブソニック)
違う言い方をすると「ローカット(ハイパスフィルタ)」です。

ある周波数以下の低音をカットしてしまうフィルタのことです。
多くのアンプはカットオフ周波数が16Hz付近に設定されていたようですが、この周波数を数段階切り替えられるものもありました。

 

何に使うかというと(基本は音楽を聴く人次第ですが)主にレコード再生時に使うことが推奨されていたようです。

レコードのノイズは大きく分けて2種類あります。
一つ目は「スクラッチノイズ」といい、プレーヤの針がレコードの溝を擦る時に出る音楽とは別のノイズで、「サー」とか「ガサガサ」などの音です。

もう一つの名称は忘れましたが、レコードはLPだと直径30cmもの樹脂製の大きな円盤ですから保管状態によっては反ってしまうのです。

またレコード自体に反りがなくてもプレーヤのレコード接触面のゴムに変形がある状態でレコードが回転するとレコード自体が上下にフワフワと不安定に動いてしまいます。

この上下振動は極めて低い低周波のノイズとなります。
(フラッターノイズという言い方もあったと思う。)

10数Hzの振動はほとんどの人には聞こえない領域ですが、ある程度以上のスピーカーシステムを使っていると(ヘッドフォンも含め)常にスピーカーの振動板(コーン紙)がフラフラと降られている状態になり、ボイスコイルの過熱(結果として断線)、音楽も低い周期で音が高くなったり低くなったりなどの減少が発生する可能性があります。

これらを防ぐためにSubsonicフィルターがあるのです。

私の曖昧かついい加減な記憶の範囲でご説明いたしますと、長いオーディオアンプの歴史の中でSubsonicフィルタが付いていたのは「ある一時期の製品のみ」だったと思います。
その理由は以下となります。


・真空管アンプやトランジスタ登場初期時のアンプは少なくともファイナルの出力側、または入力側(特にトランジスタプッシュプルアンプ)のいずれかはトランス結合となっていたものが殆どであり出力帯域幅がとても狭く、NFBをたっぷりかけても低域側の-3dBポイントは数十Hz~100Hz以上と大変にf特が悪かったのでレコードの反りなどの低周波ノイズを考える必要がなかった。

・しかし1970年代頃からマニア向けの製品を除き、オールトランジスタでファイナルも「SEPP+ピュア/セミコンプリメンタリ ICL/OCL」が当たり前となりf特も2Hz~100kHzなんていうのが普通になってしまった。

結果としてそれまで問題とならなかったレコードからの超低周波ノイズが問題となるようになりSubsonicフィルタが搭載されるようになった。

(現在のオーディオアンプはD級増幅回路(所謂デジタルアンプ)以外は上述のSEPPコンプリメンタリ回路が普通となっており、この回路の基礎は1960年代後半に完成されたと言って良いのです。)

・アンプの回路は現在に至るまで大きな変化はないが、1980年代前半から登場したCDによってレコードのスクラッチノイズやレコード盤の反りの超低周波ノイズの問題は無くなってしまい、あえてSubsonicフィルタを設ける必要がなくなった。

このスイッチを取り除いただけでコストダウン及び音質の向上が期待出来る。
ただし現在でもPHONOイコライザーが搭載されているアンプはSubsonicフィルタが搭載されているものもあるようである。


以上ですがメーカによってはさらに(私の知らない)不思議な機能もあったかもしれません。

なお総合アンプやFMチューナーにはMPX(マルチプレックス フィルタ)というスイッチが付いていて、ステレオ信号復調時の19KHz のパイロット信号を除去するためのスイッチが付いていたものが多かったと思います。
(カセット/オープンリールテープデッキにも。ドルビーの録音時の誤動作防止のため)

一般のプリ/プリメインアンプについていたかは覚えていません。

今はテープを使ってドルビー録音する人なんて殆どいませんから見なくなったのでしょうね。

 

私的意見ですが、本来音質最優先のアンプはボリュームと最低限の入力セレクタだけが付いているものがベストと思います。
(金田式アンプが究極の形だと今でも思っていますが、ちょっと極端すぎて好き嫌いが多いのも事実ですね。)

ただそうは言っても家庭で超小型のスピーカーで聞きやすい音、かつ小音量で鳴らすのであればやはりLoudnessやトーンコントロールはあった方が良いですね。

 

本記事を書いていて、「こういう、ああいうアンプが欲しい、作りたい」とかではなくて、昔を思い出してワクワクドキドキして来ました。

これぞ懐古趣味ですかね!

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6 Responses to “昔のオーディオアンプは不思議な機能満載!”

  1. 島田 より:

    色々な説明 大変参考になりました。
    今、アナログレコードを楽しんでいます。ダイヤトーンのプリアンプには、サブソニックフィルター、トーンDEFEAT、マイク入力まであります。M-P05です。プレーヤーはオーレックスSR-255 ダイレクトドライブです。

    • kaikoshumi より:

      島田 様
      こんにちは。コメントありがとうございます。
      素晴らしい機器をお持ちですね。大変貴重なものと思います。

      それにしても昔のプリアンプ、プリメインにはMIC入力があるものがありましたね。

      テープデッキならばともかくこれら↑のアンプにマイク入力を付けても使う人がいるのでしょうか?
      この疑問は昔から今に至るまで変わりません。
      無駄な気がしますが・・・。

      この度のご訪問、感謝申し上げます。
      またおいで下さいね。

  2. KT より:

    オーディオも時代の流れとともに変わっていきますね。オーディオの言葉自体今の若い世代には存在しないでしょうか。
    日本は逆に時代の流れに乗れなかった。つまり、ハードウエア時代からクラウド世代への変革についていけなかった。
    業界全体がハードウエアとの決別を図り、軽薄短小の代表的なスティックメモリ、携帯APPSの開発、ストリームング・サービスなどへの対応を早期時代から予想して着手しておけば今の経済も活性化の道が開けていたかもしれません。

    • kaikoshumi より:

      KT様
      コメントありがとうございます。
      オーディオ機器はもちろんビデオ関連など「趣味の電化製品」は今の時代ドキドキする、所有に誇りがあるなどの製品が無くなってしまいました。
      趣味品なのだからごく一部でもそういうものがあって良いと思います。
      またそういうものがないから廉価品もつまらないものばかりで中華製に負けるのだと思います。
      どうしても日本メーカは「日本製の誇り」だけで商品作っている感じがします。その気持ちは無くしてほしくありませんが、それだけでは日本人にさえ受け入れられない時代になっています。
      今はおっしゃるようにネット融合が大切な時代です。でもネット融合でもトップエンドの商品は「ドキドキ感」があって欲しいです。
      また当サイトにお越しくださいね。

  3. mat73 より:

    初めまして。
    検索中に遭遇、懐かしさも相まって色々と頷きながら興味深く拝読しました。
    そこで オーディオのMODEスイッチについてですが、1960年頃からステレオ録音が本格化しステレオLPが発売され、82年のCD登場までレコード全盛が続きました。ただ、70年頃はまだ輸入盤の中には左右が逆にカッティングされているものや、モノラル音源を疑似ステレオ化したもののあまり上手くいっていないものがあり、REVERSEにしたり、L+Rでモノラルに戻すと違和感を感じなくなることがしばしばでした。
    特にジャケットの角が切られていたり、盤ぎりぎりで穴が開けられていたジャンク扱いの輸入盤に多かった気がします。とは云え国内盤一枚分で3〜4枚買えたことと、国内盤にないものも多かったので重宝した覚えがあります。後年に国内盤で出たものやCDでは修正されており、現在MODEスイッチを動かすことはありません。
    当時、ジャンクレコードをよく購入したのは、東急渋谷駅改札口を出て右側、文化会館への渡り廊下口と下り大階段の間付近でのワゴンセールでした。
    それからスピーカーA+Bは安全?ですが、(A+B)がある機種の取説にはどれも「4ΩのスピーカーシステムをA、Bの2系統に接続して両方同時 [A+B]に鳴らすことは絶対に避けてください。」との注意書きがあります。
    また、プリメインアンプのマイク入力ですが、カラオケの練習が一番だったかも知れませんが、当時「Minus-One」というレコードがありました。四重奏、五重奏、バンドなどで(オケもあったかもしれません)一つの楽器のパートが入っていないレコードです。再生しながら、無い楽器パートを自分で演奏し
    録音する、それを再生して自分の演奏をチェックするという、わざわざミキシングアンプを揃えなくても楽しめたものです。
    当方、当時のものを直しなおし、時には騙しながら使っていますので、どの機能も付いています。AUTO MPX NOISE CANCELER もエアチェックが死語になった頃には出番がなくなりました。らじるらじるはノイズがなくて良いですが、黒い筐体に緑のスケールが浮かぶのも中々いいものです。
    以上、ご参考まで。

    • kaikoshumi より:

      mat73様
      こんにちは。コメントありがとうございます。
      頂いたコメントで少し謎が解けた部分もあります。
      MODEのREVとかL+Rはそういう事だったのですか。特にREVはどうしても理解出来ませんでした。
      左右逆にカッティングされた、なんて当時に遡っても考えられないミスですね。

      >東急渋谷駅改札口を出て右側、文化会館への渡り廊下口と下り大階段の間付近でのワゴンセール・・
      →ここは覚えています。たまに出ていましたね。でも買ったことはありませんが。今の渋谷の変貌ぶりからすれば本当に大昔の思い出になってしまいました。

      スピーカーのインピーダンスの問題、そう注意書きがありました。4Ωパラで2Ωですから通常のアンプでは保護回路が働くか壊れてしまいますね。
      マイク入力、そういう使い方でしたか。なるほどと思いますがやはりあのMICジャックを一度も使わずにアンプの寿命を迎える人の方が多かった事でしょう。

      まあ1970年代はマイクミキシングは確かに流行っていましたので当時のラジカセもお決まりのようについていましたね。
      私の所有するラジカセも付いていましたがミキシング機能は一度も使いませんでした。

      懐かしい情報ありがとうございました。また当サイトへお越しくださいね。

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こんにちは。私の名前は「 ノンダクレー」と申します妻子持ちの普通のクソ親父であります。
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色々と思う事が多くなる年齢、このサイトで「懐かしい街と物」をお楽しみ頂ければ幸いでございます。

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