昭和の洗濯機
昭和の洗濯機とは?
昭和、というと既に知らない世代もたくさんいます。
これから時が進めば平成どころか令和さえ知らない世代も出て来ます。こんなことは当たり前ですね。
しかし昭和は「今日現在も使われているモノ、様々な文化の基礎」が作られた時代であり、平成や令和になってから初めて出現したというものは実はかなり少ないのです。
スマホは平成になってからで、その前身の携帯電話も同様です。
しかしその前のショルダーフォンや、固定電話機、無線電話装置などは全て昭和に開発されたものです。
家にある他の様々な家電だって同じです。昭和に生まれてその後改良されて現在に至り、さらに改良を続けています。
文化的な事だってそうです。アニメや関連したフィギュアなんてもろに昭和発です。
そんな中身近な家電の中で特に変革が大きかったと思われる(これは私が勝手に思っているだけですが)洗濯機にターゲットを当ててみます。
身近な家電といえば他にはテレビ、冷蔵庫、エアコンなど様々なものがありますが、よーく考えてみると最も劇的に変化を遂げて来たのは洗濯機ではないか?と私は思った次第です。
洗濯機の進歩
現在主流の洗濯機はドラム式、またはトップローディング式(槽が一つで上から洗濯物を投入する)で、いずれも乾燥機能も付いていますが、今でもごく少量ながら昔ながらの2槽式洗濯機(洗濯槽と脱水槽が独立)も製造販売されています。
洗濯機、というと電気仕掛けや自動式に拘らなければやはり洗濯板とたらい、ということになりますね。
以下の写真のようなものですが、私のようなおじさんでも家で使っているのを一度も見た事がありません。
知人宅で実物を見た事はありますが、その時点でも使っておらず電気式の洗濯機を使っていました。
↓使い方お分かりかな?
引用元:Wikipedia
©Jnn。 – Jnn's file。, CC 表示-継承 3.0,
https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=388203による
たらいに水を張って、ギザギザの付いた洗濯板で衣服をゴシゴシ擦って汚れを落とすのです。
これでゴシゴシやったら汚れは落ちても繰り返すと布が傷むと思うのですが、どうだったのでしょうか?
でも一番の問題は重労働ということですね。
電気仕掛けのものが市場に出て来ると一気に進歩の度合いが早まります。
単槽式(槽が一つで脱水機能は無し)、単槽ローラー式脱水機付き(後述)、2槽式、ドラム式、乾燥機付き(洗濯機本体上部に乾燥機をセットする)、乾燥機一体型などどんどん新しいものが出て来て家事も楽になって行きます。
↓2槽式。奥の小さい槽が脱水槽。左の洗濯槽で洗濯が終わったら「洗濯物を手で持って」奥の脱水槽に移して脱水する。
引用元:写真AC https://www.photo-ac.com/
恐らく電気仕掛けの洗濯機が世に出て、令和4年の今日に至るまで最も長い間使われて来た洗濯機は2槽式ではないかと思われます。
現在はごく少数派になってしまいましたが主流のドラム式よりも販売されて来た期間が長いのです。
脱水槽が付いているというのはとても画期的とも言えますが、【洗濯槽から脱水層へは手で洗濯物を移す】というのは結構大変な作業でした。
水分を吸った衣類は想像以上に重く、しかもたっぷり水を含んでいますから気を付けて移さないと周りがビシャビシャになってしまいます。
もう一つ2槽式洗濯機には厄介なことがありました。
それは脱水槽に洗濯物を入れたら、洗濯物を押さえつける蓋をするのです。
これは脱水槽の入口の蓋ではありません。以下の写真のような蓋(脱水用キャップというらしい)を洗濯物の上にかぶせるのです。材質はやや柔らかい樹脂製で、適度に曲がる(撓る)ものでした。
しかも単に被せるだけではなくて、洗濯物を上からしっかりと押さえつけるにようにし、かつこの蓋が水平になるようにしなくてはなりません。押さえつけが足りない、水平になっていないと脱水中に大きな異音がして場合によっては脱水槽が止まってしまいます。
慣れても絶妙な角度があったり、洗濯物自体は凸凹していますので水平になんて難しいのです。
しかも脱水中は高速回転するのですから。
↓脱水用キャップの一例
引用元:楽天市場様 https://www.rakuten.co.jp/
面倒くさい2槽式ではありましたが、脱水用の槽が付いたというのは画期的でしたね。
脱水後の洗濯物の水分量は現在のドラム式と何ら変わらないくらいの脱水能力を持っていたのです。
古いけど画期的ローラー式脱水機付き洗濯機
歴史的には先述の2槽式の一つ前の世代になるので話しは前後してしまいますが、実は本記事のメインディッシュはこの【ローラー式脱水機付き洗濯機】なのです。
洗濯槽が一つで脱水槽は付いていませんが、画期的な脱水機能が付いていました。
まずは以下の写真をご覧ください。
引用元:Wikipedia
Akiyoshi's Room – Akiyoshi's Room, パブリック・ドメイン,
https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=2726055による
手前の槽で通常の洗濯を行います。
そして奥の2本のローラーに洗濯後の衣類を挟んで(説明用に布が挟んである)右側のハンドルを手で回してローラーで脱水するのです。
これは画期的でした。手でローラを回すと言っても恐らく現在のドラム式の遠心分離式の脱水機能用より脱水能力は高かったのでは、と思います。
とにかくローラーで挟んで無理やりギュッと水分を衣類から排出させるのですから効果は抜群で、かつシワ伸ばしも兼ねて出来ました。本方式は戦前から世界各地にあったようです。
上記の写真は昭和30年代後半のものですが、これは奥行きを取るのでローラーを洗濯機右側に設置したものが開発されて、こちらが爆発的に普及したのです。うちにも知人宅にもありましたのではっきり覚えています。
引用元:ミドルエッジ様 https://middle-edge.jp/
↓こんなのも。ローラーは見えないが手前にハンドルの一部とローラ出口が見える。
引用元:Wikipedia
Toshihiro Matsui from Tsukuba and Yokohama, Japan – 昭和の洗濯機, CC 表示 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=61877998による
ローラー式脱水機の短所
ローラー式脱水機は先述のように脱水能力が高く、シワ伸ばしも出来て実に画期的な機能なのですが、実は短所の方が多かったと思います。あくまでも私見ですが。
●ローラーを回すハンドルが衣類を挟むとかなり重たい。
当然ですが、元々2本のローラーの隙間は狭く設計されているので厚めの衣類だとかなりハンドルが重たく感じます。
お手上げになった場合はハンドルを逆回転させて衣類を「脱出」させたりもしました。
知る限りではこの部分を電動にしたものを知らないのですが、あったのでしょうか?
でもこういう高負荷になる機械って電動だと難しいんですよね。モーター焼けちゃうし。油圧なら問題ないけど家庭用洗濯機で油圧システム、なんてコスト面からあり得ないですね。
●生地を痛めやすい
使ったことのある方はお分かりと思いますが、衣類がローラーを通過する時はかなりの圧力がかかります。
ですので生地によっては衣類を痛めてします。特にセーターなどですね。
当時もセーターなどは街の洗濯屋さんに出していたと思いますが、費用を抑えたい、直ぐに着たいので家で手軽に洗いたいという場合はセーターもこのローラー式脱水機に掛けていたと思います。
●ボタンの付いた衣類は要注意
服にもよりますがボタンの付いたものはローラー式脱水機に通してはいけません。
見事にボタンが取れます。取れないまでもボタンによっては割れたり欠けたりしてしまうことがあります。
当時もボタン付きの物は脱水機は使わなかったと思いますが、ボタンが悲惨な事になったという話しは聞いたことがあるので、やってしまった方もいたのでしょう。
●指を挟んだら大変
普通に使っていれば衣類を挟む時に一緒に指を挟んだ、なんてまずなかったと思います。
しかしこのローラー式脱水機というのは子ども視線から見るととってもかっこよく興味惹かれるメカなんです。
こういう見方をするのは男の子だけかもしれませんが、確かに魅力的なかっこよいメカだったのです。
このローラー式脱水機付き洗濯機がバカ売れした時代は日本が高度経済成長真っ盛り、高速道路や新幹線が疾走し、テレビではウルトラマンシリーズで陸海空を多くのメカが走り飛び回り、ウルトラマンが怪獣をやっつけるという現在とは比較にならないあらゆる面でイケイケの時代だったのです。
だからこのローラー式脱水機は男の子の羨望の眼差しの洗礼を受けることになるのです。
私も記憶がありますが、親が使っていない時に意味なくローラーのハンドルをくるくる回したり、紙などを挟んでローラーを通して遊んだりしました。
それと禁断の遊びがありました。
指先をほんのちょっとだけローラーに挟むのです。でもすぐに痛い、と感じるので指を引き抜いたりハンドルを逆転させましたが、これは非常に危険な行為ですね。
友人もやった人が何人もいますが、幸い誰一人指を挟んで怪我をした、抜けなくなったという子どもはいませんでした。
今思うと我が子と重なるようでハラハラドキドキします。もっともこんな洗濯機は家電量販店に行っても今では売っていませんけどね。
●ローラー内の異物に注意
ローラーの汚れはそのまま衣類に付着することがあります。ですからローラーに付着する異物や汚れには普段から気を付ける必要があるのです。
一般的な使用では異物と言えば糸くずくらい、汚れも基本的はそんなに付くものでもなかったと思います。
しかし我が家ではなくて友人宅での話しなのですが、ローラーに虫が付いていてそのまま衣類を挟んでハンドルをグルグル回してしまったお宅もあったのです!
結果は言うまでもありませんし、言わない方がいいですよね。
でもそんなことがあるの?と疑問に思う方も多いでしょう。
せいぜいハエ?蚊?くらいと思いますよね。でも蝶(蛾)やバッタとかの類なのです!
理由ですが洗濯機を家の外に設置するとこのような悲劇も起こりうるのです。
家の外と聞いて、なぜ?と思う方もいらっしゃると思いますが、昔も今もベランダやアパートの外の廊下(玄関明けた横とか)に洗濯機を設置するお宅もいらっしゃるのです。
もちろん雨の直撃を受けないようには気を付けますが、横殴りの雨とかだと濡れてしまいますし、やはり洗濯機本体への汚れも室内置きよりは進んでしまいます。でも設置場所がそこしかなければ仕方ありません。
古いアパートだと外の廊下に設置するのが前提になっている所もあります。
近年建築されたアパートはさすがに「外を前提」の物件は無いと思いますが、古いアパートなどでは今でも全国各地で見ることが出来ます。
(首都圏でもあちこち見られる。でも北海道ではさすがに見た事がない。雪よりも気温が低すぎるからだと思う。)
↓ 外に設置した例(2槽式)
引用元:写真AC https://www.photo-ac.com/
一番進歩したのはやはり洗濯機
完全私の独断の意見ですが、あらゆる身近な家電の中で最も進化したのは洗濯機だとやはり思います。
先述した様々な身近な家電も画期的な進歩をしてきました。
でも洗濯機ほどその姿形を変えて来たものはないのではないでしょうか?
テレビも最初は長い脚の生えた白黒真空管式、そして豪華な家具調型、近未来を表すようなSF的な外観のもの、今主流の薄型と進化をしていますが、結局「箱の真ん中に表示部があるだけ」の形態は全く変わっていないのです。
冷蔵庫やエアコンなんてどうです? テレビ以上に変わっていませんね。
でも洗濯機は全く別物と言えるほど形を変えて進化してきました。
最新のドラム式乾燥機付き辺りは進化がそろそろ頭打ちかな?とも思いますが、次は乾燥後に畳んで仕舞ってくれるまで進化してほしいですね。
実は数年前に国内のあるベンチャー企業が洗濯した後に、衣類を畳んでくれるという画期的なものを開発し、発売予定まで発表されたことがありました。テレビで見ましたがタンスみたいな形をしていました。
確か価格は250万円くらいとかだったと思いますが、画期的な商品の価格は最初はこんなもの、ホームビデオだってと思っていましたが、けっきょく発売中止になってしまいました。
理由ははっきり覚えていないのですが、確か開発費がかかり過ぎ、マーケットが読めないとかの理由だったと思います。
その会社が今も残っているかは分かりません。でもいつか実現してほしいですね。
結局技術というのは需要が無ければ開発されない、販売されないものなのです。
もちろん超高層ビルや宇宙ステーションなど先端技術の結晶と言えるようなものだとまた話しは別ですが、家電や一般人が使用する製品は技術の進歩によって必ずしも便利なものが発売されるわけではありません。
でも洗濯機が画期的な進化をしてきたような夢を様々な分野の商品で実現してほしいと切に願います。
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ローラー式の脱水は、ほんの子どものころ、「影取」とかいうところのハンバに住んでいたころ、
親が使っていました。そのころ「洗濯機」というのは家の中に置くもんではなくって、
外のひさしがあるところ(雨ざらしはさすがになかった)においてあるのが常でした。
・・・たぶんアースはしてた…と思うはじめっち
手間や時間的に便利なのは、スイッチ押せば洗濯・脱水・すすぎを自動でやってくれる「一槽式」が便利なもんなんすが、
「二槽式」のほうが、洗った靴などを脱水するときだけに使うときとか便利だったっす。
ある「安宿」で、「二槽式の洗濯機」の脱水部分だけが靴脱水のためだけ(ほかは壊れれて使えないっす)に設置されてるのを見つけて、
「同じこと考えるヤツはいるんだな」と思ったっす。
・・・使えるのは運動靴・スニーカー限定なんすがね…ゆたか
あたいはむずかしいことはよくわかんないけんども、(二槽式の)「すすぎ」のときは、
「ためすすぎ」と「水ながしっぱなしすすぎ」の二通りがあったんだけども、
水流しっぱなしにするのは、なんとももったいなかったのだ。
「洗濯」のあとの脱水かけるときに、よく「バケツ半分」の水を入れてから「脱水」すっと、
そのあとの「すすぎ」の水を「ためすすぎ」にできて、水が節約で来たりしたのだ。
・・・「一槽式」に慣れるともうむかしにはもどれないのだつるみん
ついに30年使ってた洗濯機(一槽式)の脱水セクションがイカレだしたのですぅ…。
・・・すごい音ですぅ…みならいかのん
4あほ様
こんにちは。コメントありがとうございます。
「影取」って戸塚区にあるのですね。以前は洋光台に長いこと住んでいたからこの付近は車で何度も通っているのですが、地名は初めて聞きました。
記事本文には書いていない(忘れていた)のですが、うちは一度も外(雨のかかる場所)に洗濯機を置いていたことはありませんが、でも風呂場に置いていたことがありました。
相当前ですが練馬区上石神井に住んでいた時、新築の1軒家でしたが何故かそのうちは風呂場に洗濯機置き場があるのです。
ちゃんと洗濯機用の蛇口があり、確か排水溝は風呂場のものと共用だったと思います。
洗濯しながら風呂に入れる、というものですが神経質な私は子ども心に風呂の洗い場に洗濯の排水が流れて来るのは嫌でした。
また当然物凄い湿気にさらされますので多分長期間の使用では錆びたり早く壊れたりすると思います。
でも風呂場や外の廊下、ベランダに設置するのが前提の時代・住居があったわけですね。
二槽式でTVで見てびっくりしたのはどこかの港町の水産加工会社で、古くなった二槽式洗濯機の脱水槽に取り立てのタコを放り込んで、遠心力でタコのぬめりを取る、というのに使っていました。
いろんな使い方があるのですね。
「ためすすぎ」ってありましたね。水を無駄にしない知恵ですが、幼少の時の私は「ためた水で濯ぐと汚いのでは?」と気になって気になって仕方ありませんでした。
そいえば「タコのヌメリトリ」は聞いたことがあるっす、まさか天売島…とかっすか?
新潟県の村松?ってとこじゃ、神社の周りに植えてあるイチョウの実(銀杏)の果肉(くさいとこ)を取り除くのに、
二槽式の洗濯機を使っているのを見たことあるっす。
・・・地域によって洗濯以外にも重宝してるんすねゆたか
あほのゆたか様
コメントありがとうございます。私が洗濯機でぬめり取りを見たのは北海道の漁港ではなかったと思います。
でも数年おいて複数回見ているので全国あちこちでやっていると思います。
銀杏の事は初めてお聞きしました。いろんなことに使われているんですね。
でもその後に衣服の洗濯をしなければまあ問題無しですが。
でもタコを高速回転する脱水層に、なんて恐ろしいことです。動いて脱走しようとしたタコも見ました。
ある意味ホラー映画ですね。
あほ様の「影取」は、東海道(国道1号線)の箱根駅伝で登場する戸塚中継所を過ぎて、かつては渋滞のメッカだった原宿(現在は立体交差化済み)を越した辺りですね。
さて、今回のテーマ「洗濯機」ですが、昭和30年代の僕の幼少期、我が家にもローラー式洗濯機がありました。
指を挟む禁断の遊びはしませんでしたが、鉄道好きだった僕には、あの取っ手が電車のコントローラーに思えて、向きが水平ならば申し分ないのにと夢想しながら、しょっちゅう触っていました。
結婚して団地住まいになり二層式を購入しましたが、お湯取りが自動ではなかったので、毎回、浴槽の残り湯を洗面器で何杯も洗濯機へ入れる作業が僕の日課となりました。
やがて、現在のドラム式に買い替え、お湯取りも自動化されてラクになりましたが、我が家では、男物と女物の洗濯は別々にというルールがあり、女房の洗濯からはみ出された僕のパンツは自分で洗う日々が続いています。
浜のヨースケ様
コメントありがとうございます。
一国の原宿は今は立体交差なのですね。私は地上時代に数えきれないほど通りましたがあそこの渋滞はうんざりでした。
洋光台から原宿を抜ける方向に行くにはどうしてもあそこを通るのですが、他の迂回ルートも何度も試しましたが、時間帯によっては原宿でゆっくり待った方が早いこともありました。
立体交差になるまで相当な年月がかかったのではないでしょうか?
電車のコントローラ、お気持ちわかります。
洗濯機のハンドルに限らず幼少の頃からの「鉄」の私はあの手のハンドル見るとなんでも電車のマスコンハンドルに思えてならなかったです。
今の電車の多くは片手のワンハンドルマスコンが多いですけど。
お湯取りポンプなんて昔は無かったですね。技術的に難しいものではなかったのですが発想なのでしょうか。
幸いうちは男女の洗濯別ということはなくて、効率よくまとめて洗っています。
先ほどの拙文の語句を訂正します。
(誤)二層式
(正)二槽式
浜のヨースケ様
ご丁寧にご連絡ありがとうございました。